この記事では、物流業界におけるSDGsの課題や活動、注目されているグリーンロジティクスについてお伝えします。
物流業界とSDGsの関係性や取り組み事例が知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
●SDGsとは
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で、持続可能な開発に向けた17の国際目標のことを指します。持続可能な開発とは、一言でいうと「地球で暮らし続けるために、私たちが継続すべき目標」のことです。
SDGsの目標の中には、貧困や飢餓、気候変動などの地球規模の課題があります。他にも、ジェンダーレスや働きがい、街づくりなどの身近な生活に関わる課題も存在し、全員で共通意識を持ち取り組んでいくことが大切です。
●物流業界におけるSDGsの課題
物流業界は、製品やサービスの供給に欠かせない重要な役割を担っていますが、同時に多くの社会的・環境的な課題を抱えています。
ここでは、物流業界におけるSDGsの代表的な3つの課題をお伝えします。
CO2問題
コロナウイルスの収束や経済回復に伴う輸送量の増加により、輸送時の二酸化炭素排出量は増加傾向にあります。
CO2排出量を削減するためには、フェリー輸送や車両の大型化を積極的に導入し、一度に大量の輸送を可能にするネットワークの構築をしていくことが大切です。
参照:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量 」
梱包資材問題
製品や資材を保護・輸送する際、多くの梱包資材が使用されます。その多くがプラスチックや紙などの使い捨て素材であり、廃棄後に大量のゴミとなっている現状があります。
梱包資材の使用量削減を目指すためには、必要最小限の梱包や再利用可能な資材の採用を推進することが大切です。
労働環境問題
人手不足に伴う長時間労働や、労働環境の悪化などの課題が生じている一方で、宅配個数は増加傾向にあります。
小口配送も増加したことにより、配達員一人当たりの負担が多くなってしまい、さらなる長時間労働と重労働につながっているのです。
改善するためには労働者の権利を尊重し、適正な賃金の提供や労働時間の確保をする必要があります。
また、消費者や依頼主も即日配送システムの見直しや、置き配システムの積極的な活用を意識することが大切です。
● SDGsに向けた物流業界の活動
ここでは、SDGsに向けた物流業界の具体的な活動についてお伝えします。
ホワイト物流推進運動
ホワイト物流推進運動とは、物流業界の労働環境や人手不足の改善、安定した物流の確保を目的とした取り組みです。
取り組みの中では、物流業者と荷主企業が連携して、物流の効率化や品質向上を行っています。これにより、だれもが働きやすい「ホワイト」な労働環境の実現が推進されつつあるのです。
物流総合効率化法の改正
物流総合効率化法とは、物流の効率化や環境負荷の低減促進に向けた法律です。
この法律に基づき、企業同士が協力し、効率的な物流活動を推進することで、政府からの認定を受けることができます。
認定を受けると、営業倉庫の減免制度や物流施設建設の際の配慮、モーダルシフト導入に向けた補助など、さまざまな支援制度を活用できるようになります。
●SDGsの取り組みとして注目されるグリーンロジスティクス
物流業界におけるSDGsの取り組みの一つとして、グリーンロジティクスと呼ばれるものがあります。
ここでは、グリーンロジティクスの概要や背景についてお伝えします。
グリーンロジスティクスとは
グリーンロジスティクス、または「グリーン物流」とも呼ばれる取り組みは、環境負荷の低減を主要な目標とするものです。
推進されることで、CO2排出量の削減や廃棄物の減少などの環境効果が実現されます。
グリーンロジスティクスの具体的な取り組みには、貨物列車や貨物船を使用したモーダルシフトの導入、共同配送など効率的な輸送ネットワークの構築、物流拠点の省エネ化などがあります。
ここで覚えておくべきことは、環境問題の解決は物流業者内での取り組みだけでは不十分ということです。
グリーンロジティクスを実現するためには、物流業者と荷主企業が連携し、協力体制を構築することが大切です。
背景
グリーンロジスティクス促進の背景は、2005年の「物流総合効率化法」の施行と2006年の「省エネ法改正」が大きく関わっています。
先ほど述べたように、「物流総合効率化法」は物流効率化の取り組みを行う事業者に対して、計画の認定や支援措置を行う法律のことです。認定を受けると、事業許可の一括取得や運行経費の支援などが得られます。
「省エネ法」は、事業者の無駄なエネルギー使用を抑制するために制定された法律のことです。
改正では、保有車両台数トラック200台以上、鉄道300両以上を保有する輸送事業者や、年間3,000万トンキロ以上の貨物輸送を委託する荷主に対して、省エネ計画の策定やエネルギー使用に関する報告が義務付けられました。
これらの法律の実施により、物流の効率化と環境への配慮が促進され、結果としてグリーンロジスティクスの促進が実現されたのです。
●グリーンロジスティクスの取り組み事例
物流業界では、グリーンロジティクスを推進するためにさまざま取り組みがされています。
ここでは、3つの取り組み事例をお伝えします。
輸送効率化
輸送効率化の一つとして、複数の企業が同じトラックを共有して商品を配送する「共同配送」があげられます。
共同配送により、同じ納品先への効率的な配送が実現し、同時に車両の台数を減らすことが可能となります。稼働トラックの減少が実現されるため、CO2排出量の減少が達成できるのです。
グリーン物流パートナーシップ
グリーン物流パートナーシップとは、複数企業の連携を強めるために「国土交通省」「経済産業省」「一般社団法人日本物流団体連合会」「公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会」「一般社団法人日本経済団体連合会」が連携して発足させたものです。
2022年6月時点で3,400以上の企業が参加しており、産業横断的に輸送効率化や省エネ対策に対する取り組みがしやすくなりました。
モーダルシフト推進
モーダルシフトとは、トラックなどの道路輸送から鉄道や船舶などの低炭素な輸送手段に切り替えることです。推進することで、大量輸送や長距離輸送におけるCO2排出量を大幅に削減することができます。
また、無人航走によるドライバーの負担軽減や労働環境改善も叶うため、人件費削減にも効果がある取り組みです。
●物流業界の SDGs推進に向けた抑える点
CO2削減や人手不足解消に大きな効果をもたらすSDGsの取り組みですが、物流業界で推進させるためには、いくつかの抑えるべき点を知っておく必要があります。
ここでは、代表的な「可視化」「標準化」「進捗管理」の3つの抑える点をそれぞれお伝えします。
サプライチェーンの可視化
サプライチェーンの可視化とは、材料調達から納品までの全工程を細部まで明確に把握することです。
可視化によって、細部の問題や施設状況に対する改善点を発見し、効果的な施策を実施できます。
また、情報の収集と分析も容易になり、持続可能なサプライチェーンの構築にも貢献します。サプライチェーンにおける課題を適切に把握し、解決するための仕組みを維持することは、SDGsを実現する上で大切です。
標準化
標準化は、企業内でSDGsに向けた取り組みや規則を、統一するプロセスのことです。
物流プロセスにはさまざまな組織が関与していますが、中でも荷物の保管や出荷を担当する物流センターで標準化が欠けていると、異なる拠点でルールが確立され、センターごとにエネルギー効率の不均衡が生じてしまいます。
企業内で取り組み方法やルールを標準化することにより、全ての組織で最もエネルギー効率の良い作業が可能になります。コストを削減し、持続可能な取り組みを実現するためには、標準化が大きなポイントとなるのです。
進捗管理
進捗管理とは、目標や計画が達成されているか定期的に確認することです。
進捗管理を行うことで、物流の効率や品質を向上させるとともに、環境や社会への貢献度を高めることができます。
また、SDGsへの成果を顧客や出資者に報告することで、企業努力のアピールにもなります。
このように、SDGsへの取り組みは環境だけでなく、企業にとっても大きなメリットとなるのです。
物流業界で生じている問題を解消し、企業や業界全体のさらなる発展を目指すためにも、まずはできることから始めてみましょう。