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【物流DXとは?】ビジネスモデルやサービスの提供方法の変化

更新日:2023年8月26日

昨今、物流業界では2024年問題や人材不足などの問題が浮き彫りになっています。
これらの課題に対応する策として、物流DXによる変革が期待されているのです。
では、物流DXとはどのようなもので、実現することで何が変わっていくのでしょうか。

この記事では、物流DXの概要や課題、ビジネスモデル、サービスの提供方法の変化について解説します。また、物流DXの事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

物流DXとは?

物流DXとは、デジタル技術の導入によって物流業界のビジネスモデルそのものを変えようとする戦略のことです。
DXはデジタルトランスフォーメーションの略称であり、デジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを変革することを指します。
デジタル化とは異なり、物流DXの目的はあくまでビジネスモデルの変革です。「IoTやAIなどの導入は目的を達成するための手段」という捉え方をするようにしましょう。

物流DX推進の背景

物流DXを推進する背景には、以下のような要因があります。

オンライン消費の拡大

昨今、コロナ禍の影響もありオンラインでの購買行動は増加傾向にあります。
このような状況は宅配需要を高める一方で、小口配送が増加することで商品管理業務の複雑化という課題を引き起こしています。
そのため、物流DXの変革による、最適なルート設定や倉庫管理の導入などが重要となるのです。

人材不足の深刻化

高齢化と過酷な労働条件により、物流業界は人材不足の課題に直面しています。
特に、ドライバーや倉庫作業員などの現場従業員の間で離職率が高まり、労働環境の厳しさが浮き彫りになっている現状があります。
物流業界の人材確保のためには、デジタル技術を駆使した働き方改革が不可欠なのです。

物流DXを導入するメリット

物流DXを導入することで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは、3つのメリットについてお伝えします。

人的ミスの軽減・作業効率化

物流DXによりシステムを自動化・機械化することで、人的ミスの軽減、作業の効率化につながります。
例えば、荷物の追跡や管理を自動で行うことで紛失や遅配のリスクが軽減できたり、ロボットの導入によって倉庫内や配送先での作業を効率化できたりすることがあげられます。
人間の負担を軽くし、安全性や効率性を向上させることは物流DXの大きなメリットです。

ドライバー不足を解消できる

ドライバー不足が深刻な問題となっている物流業界では、物流DXの導入によりドライバー不足を解消することができるといわれています。
例えば、自動運転技術やドローン、IoT・ビックデータを活用した最適なルート算出などが代表的な例です。これらを活用することでドライバーの負担を軽減できたり、より少ない人員で荷物を配送できたりするなどのメリットがあります。

電子化によるコストの削減

物流に関わる手続きや業務を電子化することで、コスト削減に繋がります。
この取り組みの代表例としては、ブロックチェーンやクラウドサービスの活用による、伝票や契約書などの書類の電子化があげられます。電子化によって、書類の作成や管理、保管、送付などにかかる人件費や諸費用が削減されるといわれています。

物流業界が抱える課題

物流業界は需要が増加している一方で、さまざまな課題を抱えています。
ここでは、代表的な課題としてあげられる「デジタル化の遅れ」「人材不足」について、具体的にお伝えします。

デジタル化の遅れ

物流業界では、デジタル化に対する投資や取り組みが十分ではなく、紙ベースの手続きや人手に頼った作業が多く行われています。
理由としては物流業界の多様性や複雑性、人手不足、デジタル化に対する意識の低さなどが考えられます。デジタル化の遅れは業務の効率低下や、業務の属人化を引き起こす可能性があるため、早めの対処が必要なのです。

人材不足

物流業界では、高齢化や3Kイメージ、低収入による人材不足が深刻な問題となっています。
中でもドライバーや倉庫作業員などの現場スタッフは高齢化や離職率の高さが顕著で、若い世代の就職意欲も低いという状況です。そのため、物流業界は労働環境の改善や人材の育成・定着策の強化が課題とされています。

物流DXを進めるためのポイント

では、物流DXを導入する上で、どのようなポイントを意識する必要があるのでしょうか。
ここでは、2つのポイントをお伝えします。

データやプロセスの標準化

データやプロセスの標準化とは、物流に関わる情報や手順を共通の形式に統一することです。標準化することで、物流の可視化や自動化が容易になり、コスト削減や品質向上につながるメリットが得られます。
また、他のシステムや組織との連携や共有をスムーズにすることにも繋がるため、物流の柔軟性や拡張性の向上も期待できるでしょう。

現場への早期還元

現場への早期還元とは、DXによって発生する作業効率化や品質向上などの成果を現場の業務に即時反映させることです。
物流DXを推進するためには現場の協力が不可欠ですが、物流の現場ではデジタル技術の導入が進んでおらず、理解が得られにくいという課題も存在しています。こうした課題を克服するためには、具体的な成果を実感してもらうことが重要です。
実際の成果を目にすることで作業員のモチベーションが高まり、デジタル技術への理解が促進されるでしょう。

物流DXによるサービスの提供方法の変化とは

ここでは、物流DXをすることでどのようにサービスが変化するのか、いくつかの例を出しながらお伝えします。

輸送・配送ルートの最適化

従来は配送元が時間をかけルート作成をしていましたが、昨今ではAIによるルート算出が導入されています。AIの導入によって無駄のない効率的なルート計画が実現され、輸送・配送の経路最適化や業務の負担軽減が叶うのです。

また、トラックでの配達だけでなく自転車による配達も将来的に導入される見込みです。自転車配送の実現によって、CO2排出量の削減や免許を必要としない人材確保が期待できるでしょう。

置き配システム

置き配システムとは、受取人の在宅状況に関わらず玄関先や指定場所に荷物を配達するシステムです。
システムの導入によって即日配送や時間指定配送などへの対策ができたり、再配達に伴う業務効率の低下が改善されたりする見込みです
さらに、ユーザー側も荷物の受け取り時間を柔軟に選べるため、生活の利便性が向上するなど多くのメリットが期待されます。

送り状・荷札・伝票などのペーパーレス化

送り状、荷札、伝票などは物流業務において不可欠な文書ですが、紙媒体での作成と管理が行われていました。従来の紙による管理は、手間と時間がかかる上に書類の紛失や記入ミスといったリスクもあげられていたのです。

物流DXでは課題解決に向けて、送り状、荷札、伝票などの電子化と自動化を推進しています。ペーパーレス化により、文書の作成・発行・管理の効率化や正確性を向上させることを目指しているのです。
また、送り状を簡単に作成できるシステムの導入は、ユーザー目線でも使いやすい環境の整備につながっています。

物流DXのビジネスモデルの実例

ここでは、実際に企業で行われている物流DXの実例をいくつかお伝えします。

日本通運株式会社

日本通運株式会社は、課題となる労働力不足と高齢化に対応する策としてAIやロボットを導入しています。
主な取り組みは、社員からの日報や通関手続きなどのペーパーレス化や事務作業の見直しなどです。中でも「関税計算書システム」という取り組みでは、送り状やさまざまな帳票を自動的にデータ化することで、社員の負担を軽減し入力ミスを減少させています。

ヤマトホールディングス株式会社

ヤマトホールディングスは自社の物流ネットワークを最適化するために、AIやIoTなどの先端技術を活用しています。
例えば、荷物の配送状況をリアルタイムで把握し、最適な配送ルートや時間帯を提案するシステムや、ドローンや自動運転車などの新しい配送手段の開発・実証などがあげられます。これらの取り組みによって、顧客満足度の向上やコスト削減、環境負荷の低減などの効果が期待できるのです。

佐川グローバルロジスティクス

佐川グローバルロジスティクスは、倉庫内の効率化と作業の最適化を目指し、無線通信自動認識システムや仕分けシステムを導入しています。
仕分け作業や検品といった業務をロボットが担当することで、作業の品質と生産性が向上し、工場内のトラブルシューティングも効果的に実現されました。

まとめ

物流DXの導入により、懸念されている問題の解決とさらなる効率化が実現できるでしょう。そのためには、デジタル化への積極的な投資や現場への理解を高める必要があります。

また、同時に現場からのフィードバックを受け入れ、意見を変革の一環として取り入れる姿勢も欠かせません。業界全体で意識改革を行うことは、物流DXを推進させるための近道となるでしょう。